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暗闇3
「こりゃ随分面倒なことになったみたいだなぁ」
清に呼び出され本邸にやって来た冬馬は、事情を聞き苦笑いを浮かべた。
「いくら相手が日南組だからって、ここまでするとは。どうやら鏑木パパは、相当我が子を溺愛してるみたいだねぇ」
そう冗談を吐く冬馬に、苛ついた正嗣は吸っていたタバコの煙を冬馬の顔に吹きかけた。
「うわっ、何すんの正嗣。嫌がらせ?」
「うるせぇ」
そっぽを向く正嗣に、冬馬はやれやれと首を振る。
そんな中で清は本題に入るべく話を切り出した。
「そこでだ。お前に鏑木グループについての情報収集を依頼したい」
「まぁね、そうなるよねー」
真志喜を奪われた以上、なんとしてでも救い出さなくてはならない。
その為には真っ向勝負では無理だ。
何か作戦を考えなくてはならない。
冬馬はその前髪をかき上げ、息を吐いた。
そして静かに告げる。
「鏑木グループと言えば、トップシークレットの案件が山ほどある。命がいくつあっても足りないよ」
その言葉に周りは口をつぐんだ。
壁際で1人黙り込んでいる迅は、ただただ冬馬を見つめる。
「……と、言いたいところだけど」
静寂を破ったのは冬馬本人だった。
ニヤリと口角を上げ、笑みを浮かべる。
「俺も真志喜ちゃんがいいようにされるのは気分が悪い。やれるだけのことは、してみようかな」
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