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暗闇4
「いやー、それにしても見事にやられましたね荒木さん」
「……」
運転をしながらニヤリと笑みを浮かべる奥田に、助手席の荒木は黙り込んだ。
気絶した真志喜を運ぶと共に強制的に荒木の目を覚まさせ、手筈通り戸塚、奥田、荒木は屋敷へと向かっている。
体の丈夫さは人並み以上の荒木は、既に動けるほどには回復していた。
流石に傷は治っておらず血だらけなままだが。
後部座席に座る戸塚の隣には、意識を失った真志喜が後ろ手で拘束された状態でぐったりとしている。
こんな小柄で愛らしい青年にタイマンでやられたというのだから、2人はイジらずにはいられなかった。
そんなこんなしているうちに、車は目的の場所まで到着する。
車庫に車を止め降りる中、戸塚は奥田に声をかけた。
「おい。お前が運べ」
「はいはーい。まったく、人使いが荒い」
そう愚痴りながら、奥田は真志喜を横抱きに持ち上げる。
抱き上げ、その体の軽さに再度驚いた。
本当にこんな華奢な彼が、あの怪物荒木を倒したというのか。些か信じ難い。
そうして一同は屋敷内へと足を進める。
広い屋敷のある一部屋に入れば、奥にはこの組織のドンである鏑木賢吾が待っていた。
「してやられたそうだな、荒木」
「……申し訳ありません」
鏑木の言葉に荒木が頭を下げる。
いつもは感情の起伏が乏しい男である荒木だが、その時ばかりは声に悔しさが滲んでいた。
そんな彼に奥田は腕の中の真志喜を見下ろし、口を開く。
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