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暗闇6
「それはできない」
「…は?」
何を言うのかと顔をしかめる真志喜に、鏑木は淡々と告げた。
「妻はどうやら、子を産めない体のようだった。年齢的にもこれ以上は期待できないだろう」
「…だったら別の人とでも子を作ればいいじゃねぇかよ。俺らの時みたいに」
「それはできない」
「はぁ?」
皮肉を込めた言葉を、鏑木はあっさり否定した。
それに真志喜は眉をひそめる。
何故俺たちの時はできて、今の人ではできない。
やっぱり俺は、コイツの考えはとことん理解できないようだ。
「彼女は大手企業の社長の一人娘だ。もしも問題が生じては、相手方と色々と状況が悪くなる。権力だけは持っている女だからな。それに、周囲からの目もあるだろう」
苛立ちが膨らんでいく。
立場立場と、こいつは世間体しか気にできないのか。
今回こうして日南組のみんなが巻き込まれたのも、俺の母さんが孕まされた上に捨てられたのも、全ては世間体。
「だったら養子でもなんでも貰えよ…ッ」
「面倒なことや都合の悪いことが多い」
腹の立つことこの上ない。
今このデカブツが邪魔してこなければ、すぐにでもその顔面に拳を叩き込んでいるところだ。
こんなヤツの血が自分にも流れていると思うだけで吐き気がする。
「…第一、なんでそんなに俺が必要になったんだよ。目的はなんだ」
一番の疑問を投げかける。
すると鏑木は一度口を閉じてから、一拍置いて話し始めた。
「繋がりを持っておかなくてはならない存在がいる。その手段として、お前が相手方の娘と婚約を結べば、事は全て丸く収まる」
「……は?」
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