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暗闇8

何もない、ただ真っ白な部屋。 俺はベッドに仰向けに寝転がっていた。 あれからこの部屋に閉じ込められて、夜明けを迎えた。 地下にある部屋らしく、窓もなければ外の音も聞こえない。 こんな簡素な部屋にいると、あの頃を思い出す。 母さんが死んでから現れたアイツに、まるで汚物を隠すように監禁生活を強いられた。 心の拠り所も何もなく、外に出ることも許されない。 ただ震える体を抱きしめて蹲っていた俺は、かなりの精神的苦痛を強いられていた。 最終的には捨てられて、死にかけた俺。 母さんもいない世界に、俺はもう生きる理由を見出せなくなっていた。 そんな時だったんだ。 あいつが…、迅が来てくれたのは。 ギュッと、自分の体を抱きしめる。 いやだ…、思い出したくない。 モノクロの景色。 真っ白な天井。 冷め切った瞳。 寒くて暗くて、寂しくて…。 側にいてくれる人は、もう誰もいなくて…。 「…っ」 ひどく、目眩がする。吐き気を催す。 ここは嫌いだ。 居続けたら、きっと壊れてしまう。 迅…。 一体どこにいるんだ…? 無事なのか…? 「迅に、会いたい…」 零れ落ちた酷く小さな言葉は、宙を虚しく漂い、やがて消えていった。

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