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暗闇10

この空間から逃げ出したい。 その一心であの頃の俺は、コイツに股を開いた。 「あの頃は所詮ガキだったからな。それが今じゃ、すげぇ美人になって。色気もあってよぉ。結構、(そそ)られるんだわ」 そう言って立ち上がった戸塚は目の前までやって来ると、俺の顎を掴み上げる。 舐めるような視線を向けられるが、冷め切った心は何も感じなかった。 「なぁ。ここに立って、服脱げよ」 部屋の中央辺りを指差し、そう戸塚は言う。 コイツのことだ。逆らえばもっと面倒なことになるだろう。 ──早く終わらせたい…。 気怠い体を動かして、俺はベッドから起き上がった。 部屋の中央まで移動すると、戸塚はベッドに腰掛け、嫌な笑みを浮かべながら此方を見つめてくる。 ため息を吐きたいのを我慢して、俺は乱暴にスーツの上着を脱ぎ捨てた。 続いてシャツのボタンに手をかける。 シャツから露わになった透き通るような素肌に、戸塚はヒュウと口笛を吹いた。 「マジかよ…。そこいらの女より、断然いいじゃねぇか」 言われていることを気にも留めずに、真志喜はズボンも取り払う。 そして最後に残った下着も、恥じる様子もなく床に放った。 「随分と潔いな。もう少し純情さとかねぇのかよ」 「うっせぇ。やんなら早く終わらせろ」 「ははっ。じゃあお言葉に甘えて」 来るように視線で促され、無気力なまま歩み寄る。 目の前に立った俺の体を舐め回すように見つめた戸塚は、首筋から鎖骨までをするりと撫でた。 もちろんそんなことで一々反応などしない。 「はっ。ほんと、初々しさのカケラもねぇな。まぁ俺、処女はノーサンキューなタイプだから関係ねぇけど」 そう言うと、次には強引に腕を引かれ、ベッドに押し倒された。

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