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家族
まったく、酷い扱いだ。
ただでさえ荒木とやり合って体はボロボロなのに、好きなようにしやがって。
「あー…、ケツ痛ぇ…」
つーか気持ちが悪い。
戸塚のやつ、碌に後始末せずに出て行きやがった。
置いてあったティッシュで汚れた体を拭く。
そうしてノロノロと脱ぎ捨てた服を着て、力尽きた俺はベッドに倒れ込んだ。
左腕にずっと鈍い痛みがあった。
やはりあのデカブツとやり合った時、骨を痛めた気がする。
なんだってんだ。
あれもこれも、ほんと散々な目に合っている。
迅の安否も分からねぇままだし…。
「…くそ」
どうやら俺は、相当弱っているようだ。
ここに来てからあのアホ眼鏡のことばかり考えている気がする。
その時。
不意に扉が開かれた。
また戸塚のやつかと一瞬思ったが、すぐに違うと察する。
部屋に入ってきた人物に、俺は顔を顰めた。
「少しは従う気になったか」
「……」
一々反応するのも面倒だった。
寝転がったまま、無言で顔を背ける。
この男と2人きりになるのは初めてだ。
誰も側に付けずに会いにくるなんて、コケにしてくれる。
俺が手を出さないと高を括っているのか。
「……なんなんだよ」
無くなっていたはずの感情が、フツフツと込み上げてきた。
怒りに震える手を握りしめる。
母さんと俺を見捨て、今まで見向きもしなかったくせに。
都合の良い時だけ息子扱いして、たくさんの人間を巻き込んで…。
「従う気になったかって…?ふざけるのも大概にしろよ…。本当に何も分かってないんだな…ッ。アンタに俺の気持ちが分かるか…?分かるわけねぇよなッ?ずっと見捨てて来たんだから!」
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