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家族2
叫んだ声は無機質な壁に吸い込まれ、静寂が訪れた。
殺意にも近い感情で睨みつける真志喜を見つめる鏑木は、不意に表情を動かした。
いつもは常に無表情な鏑木が浮かべた笑みに、真志喜は目を見張る。
「普通なら、わざわざ身分違いの女を抱いたりはしない」
「…は?」
「あいつは、なかなかの上物だった」
「…ッ」
固まる真志喜を見据え、鏑木は目を細めた。
「お前は、あの女によく似ている」
「…ッッ!」
次の瞬間には、真志喜は鏑木の胸ぐらを掴み上げていた。
言葉では言い表せない感情が胸を埋め尽くす。
あまりに感情が昂り呼吸を乱す真志喜を、鏑木は無言で見つめていた。
その時。
「失礼致しますっ。少々ご報告が…!」
「…どうした」
「それが…」
やって来た男は、一度言い淀んだが次には口を開いた。
「それが、日南組の連中が…!」
「…っ」
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