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家族3
「あー、どうも。先日はお世話になりました」
周りの騒がしさとは不釣り合いの、酷く呑気な声で挨拶をする。
倒れ伏した下っ端の男の上に腰を下ろした迅は、まだ日南組と鏑木の連中がやり合っている中、悠々とタバコの煙を吐いた。
「オタクの人間が不正な動きをしてるのを突き止めましたね。現場に押しかけてみました」
『……』
携帯の相手は沈黙を貫いている。
まさか情報を突き止められるとは思わなかったのだろう。
生憎、日南組には中々に手練れの情報屋がいるのだ。
咥えていたタバコを地面に落とし、踏みつける。
「話し合いをしましょう」
単刀直入に、迅はそう切り出した。
「自分が、そちらへ伺います」
『……わざわざ出向いてくると?』
「ええ。その方が手っ取り早い」
捨身の策、というわけでは決してない。
どうせ場所を指定して呼び出しても、向こうは真志喜を連れては来ないだろう。
不正な行為をしている現場をおさえた。
それだけでは、鏑木グループは崩せない。
ここからが正念場だ。
なんとしてでも、真志喜は取り返す。
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