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家族4
通された客室に、迅は足を踏み入れる。
そこには鋭い視線で此方を見据える鏑木の姿があった。
正嗣も同行すると言い張ったが、これ以上若頭に動き回られても問題だ。
清と共に待機させ、迅は1人で行く旨をみんなに伝えた。
「そんな、無茶だ迅!数人でも連れて行くべきだ!」
そう主張する正嗣の、迅は首を横に振る。
そして静かに答えた。
「それじゃあ意味がない。1人で行くことに意味があるんだ」
周りが迅を警戒する中、当の本人は鏑木だけに視線を向ける。
「真志喜は、監禁されているんですか」
「聞き分けの悪い息子を、躾けているだけだ」
すっかり敬語の取れた口調でそう返す鏑木に、迅の声は低くなる。
「躾けですか。幼い頃にトラウマを植え付けるだけではなく、こんな真志喜の意思を完全に無視したような真似が。あなたは真志喜がどんな気持ちで今まで生きてきたか、考えたことはありますか」
「私たち家族の問題だ。ヤクザ如きが口を突っ込むな」
「真志喜は俺たちの家族だ」
強く言い放ったその言葉に、鏑木はスッと目を細めた。
面倒な男だ。
こういう相手は中々潰すのに手がかかる。
「…それで。話し合いとは、何だろうか」
話を変え、本題に入った鏑木に、迅は口を開いた。
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