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家族5
「入るぞー」
昼食を持って部屋に入った戸塚は、ふと真志喜の姿が見当たらないことに気付いた。
一瞬ドキリとしたが、すぐに膨らんだ布団に目が溜まり、ホッと息を吐く。
「なんだ寝てんのか?ったく、驚かせやがって」
そう軽口を叩きながら、トレーをテーブルに置くべく中へと足を踏み入れた。
その瞬間。
扉の陰に潜んでいた真志喜が、背後から戸塚に突っ込んだ。
「ァガッ…!?」
素早く戸塚の首に手刀を叩き込み、崩れ落ちた体を受け止める。
最小限に音を抑えて戸塚を気絶させた真志喜は、背後の開いたままになっている扉へ顔を向けた。
あの時。
確かに報告に来た男は、日南組の、迅の名前を口に出していた。
迅が、ここに来る…っ。
いや、既にいるのかもしれない。
そう思えば止まらなかった。
逃げ出す気力さえなかった体が、ただ1人の存在の為だけに突き動かされる。
「な、何故こんな所に…!?」
「捕まえろ!この先に行かせるな!」
俺に気づいたやつらが迫ってくるが、無理やり突き進む。
そして階段を上り地下を突破した俺は、絨毯の敷かれた長い廊下を駆け抜けた。
迅…迅…。
そこにいるのか。
すぐ側に来ているのか。
「迅…!」
無意識に漏れ出た声。
それは聞き覚えのある、何かが破裂したような乾いた音に掻き消された。
廊下に響いたその音に、心臓が跳ね上がる。
この音は…、銃声…っ?
一瞬頭が真っ白になった。
あまりの衝撃に止まりそうになった足を、縺れさせながらもなんとか動かす。
そうすれば、音が聞こえた地点に辿り着いた。
驚いた顔を向けてくるやつらを押し除けて、俺はその部屋に転がり込む。
そして次には、己の目をあらん限り見開いた。
「迅ッ…!!」
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