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家族6
ポタリポタリと、赤い滴が床に落ちる。
左肩を右手で押さえている迅の姿に、真志喜は全身に冷たいものが走った。
撃たれている。
迅の左肩が、銃で撃たれている。
マズイ。
弾は貫通しているのか?
というか血だ。
早く、止血をしなくては。
しかし駆け寄ろうとした途端、背後から俺の腕を掴んだ荒木によって阻まれた。
振り払おうとしても、両腕を掴み上げられ動きを封じられてしまう。
銃を撃ったのは、あの廃墟に戸塚と共に現れた若い男だった。
迅に拳銃を向けたままでいる相手に、俺は必死で叫ぶ。
「もう、もうやめろ…っ。やめてくれ…!言うこと聞くから…!従うから…ッ!!」
そう懇願する真志喜の目の前まで来た鏑木が、強引に顎を掴み上げた。
至近距離から向けられる冷徹な瞳に、過去の記憶が蘇り真志喜は息を飲む。
恐怖に身を竦ませる真志喜に、鏑木は告げた。
「これで分かったか。お前に何かを望む資格はない。でなければこうなる。今起こっていることは全て、お前のせいなんだ」
「…っ」
「家族ごっこは、お終いだ」
真志喜は脱力し、床に座り込んだ。
頭の中が真っ白で、目眩がする。
嫌だ…。嫌だ…。
失いたくない。
そんなことになるくらいなら、俺は…っ。
──諦めてはいけないよ。
「…っ」
いつの日かの言葉が蘇った。
弱り切ったその手で、俺の手を握りしめてくれた母さんの顔が浮かぶ。
「……お終いなのは、其方の方だろう…」
「…!」
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