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家族7
「迅…!」
振り返った先にいた迅は、ふらつきながらも己の足で立っていた。
そして手首に付けた腕時計を、顔の近くまで持ってくる。
「色々と、確かな証拠を頂きました…」
その言葉にハッとする。
まさか、カメラと盗聴器…。
「これだけじゃない…。ウチの…優秀な情報屋が、今までの罪状を…諸々掴んでいましてね。資料も全て、手元にある。もう防ぐことは不可能だ…」
「…っ」
そこまで手を回していたなんてと、信じられない事実に真志喜は唖然とする。
動揺に周りが騒めく中、迅は話を続ける。
「不正な金の流れが見つかった…。関わりのあった企業、関連団体も、手を…引くことになるだろうな…。1つでも証拠があれば、捜査ができる…。他のものも…芋ずる式に分かるだろう」
その左肩を真っ赤に染めながらも、レンズ越しに見える迅の目は真っ直ぐに鏑木を見据えていた。
「ここで俺を殺そうが、情報は止めようがない。寧ろ抗争が起きる」
瞠目し口をつぐむ鏑木に、圧倒的な存在感を放つ迅は、最後に告げた。
「日南組、舐めてんじゃねぇぞ」
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