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帰る場所2
「真志喜さん、お久しぶりですっ」
「あ…、彼方さん。と、正嗣」
「ついでみたいに言うなよ」
calmに訪れた正嗣と彼方は、真志喜の両隣りのカウンターに座った。
「凪さん、俺ブレンド。彼方は?」
「あ、えと…。ホットミルクをお願いします」
「この前試しに飲んでみてから、彼方くんハマってるな。ホットミルク、ハチミツ多め」
「はいっ。また飲みたくなりました」
ふわふわと笑みを浮かべる彼方に、場の空気が和む。
騒動がだんだんと収まって、ようやく西倉さん指導の元、護身術の稽古ができるようになったらしい。
あれから西倉さんは、特に大きな怪我はなかったようで安心した。
目の前でぶっ倒れた時は流石に焦ったけど…。
榎本も傷の数は多かったが、大事にはなっていない。
俺をみすみす連れて行かれたことが相当悔しかったようで、なんでも彼方さんと一緒に稽古に参加しているらしい。
「彼方さん。色々と迷惑かけてごめん…」
「そんなそんなっ。俺が日南組にお邪魔してるんだから、全然気にしないで下さいっ。真志喜くんが無事で何よりです」
ブンブン首を振る彼方を、正嗣が微笑ましそうに眺めながら徐に煙草を咥える。
いつもは「凪さんの店でそんなモン吸うな!」と突っ掛かるのだが、今はそうする気になれなかった。
「あの、真志喜くん…」
「ん?」
顔を向けると、彼方さんは躊躇うように口をパクパクさせ、やがて遠慮がちに尋ねてきた。
「迅さんのお見舞い。行かれてないって、本当ですか…?」
「……」
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