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帰る場所3
言われて口をつぐんだ。
彼方さんの言葉は事実だ。
俺は迅が集中治療室で一命を取り留めて以降、一度も病院に行っていない。
「らしくねぇな。何をそんなウジウジしてんだよ」
正嗣にそう言われても、何も言い返せなかった。
俯き、すっかり冷めてしまったカフェラテを見つめてポツリと言葉を漏らす。
「だって、合わせる顔がねぇ…」
俺のせいで迅は死にかけた。
それなのに、どんな顔して会いに行けばいいんだよ…。
そんな真志喜を無言で見つめていた正嗣は、次には煙草の煙を真志喜に向かって吹きかけた。
「ッ、ゴホゴホ…!」
「ちょっと、正嗣さんっ」
彼方が咎める中、「何すんだ!」と顔を上げた真志喜に正嗣は口を開く。
「ばーか。今更あいつ相手に気ぃ遣ってんじゃねぇよ。つーかそんな状態じゃ、仕事で碌に使いもんにならねぇ」
「う…」
言葉を詰まらせる真志喜の頭に、ポンと手が乗せられた。
見上げると、カウンター越しの凪さんが優しく微笑んでいる。
「真志喜。お前はもう少し、自分に素直になれ」
「…っ」
真志喜は目を見開いた。
自分に素直に。
そんなこと、考えたこともなかった。
本当になってもいいのかな。
こんな俺でも、素直に望んでもいいのかな。
「ほら、行ってこい」
「……」
トンと背中を押すようなその言葉に、俺の体は動き出していた。
立ち上がり、扉を開け放つ。
店を勢いよく出ると、目の前に車が停まっていた。
ピシッと気をつけをする忠犬に唖然とする。
「榎本…」
「お送りします!真志喜さん!」
そう言って助手席のドアを開ける榎本に、俺は口元を緩めた。
「…ありがとう」
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