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帰る場所10

クチュクチュと艶かしい水音が部屋に響く。 呼吸を荒げ身を捩る真志喜は、涙ぐんだ瞳で迅を見上げた。 「っ、じ、ん…、迅…っ。も…いいから…っ」 「ほんと?まだ早くない?」 「いいっ…、いいから…!」 すっかり3本もくわえ込んだ後ろから、ゆっくりと指を抜かれる。 それだけで中がキュッと締まり、次に来る快感への期待から体が疼いた。 なんだか俺だけが余裕なくて。 こんな自分に羞恥心を覚える。 「…真志喜」 「っ、…?」 少しトーンの落ちた声を不思議に思う。 どうしたのかと顔を上げると、此方を見下ろす迅が不安そうな瞳をしていた。 「…お願い。俺のことだけ、考えてて」 「…っ!」 まるで駄々を捏ねる子供のように、迅はキュッと眉を寄せる。 なんだよ、それ。 ガキじゃねぇんだから。 幼稚ともいえる独占欲を見せる迅に、自然と口元が緩んだ。 そっか、コイツも同じなんだ。 俺と同じように、不格好になろうがなんだろうが、ただただ必死に求めてくれている。 俺は迅にとって、必要な人間なんだな…。 そう考えると、胸が熱くなった。 スッと両手を広げる。 目を見開いた迅に、真志喜はふわりと微笑んだ。 「きて…、迅」 息を吸うのが聞こえる。 それから両手で顔を覆った迅は、暫くピクリとも動かなかった。 いい加減声をかけようかと思ったところで、指の隙間から此方を見つめてくる。 「………真志喜のえっち」 「…ッブハ」 「えっち」って、なんだよそれ。 ケタケタ笑っていると、迅が服を脱ぎ去った。 ああ、やっとだ。 やっと、迅と繋がれる。

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