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高校デビュー2
入って来たのは羽純 慎太郎文字 くんだ。
クラスの中心的な人物で、その愛嬌がある見た目と明るい性格から女子にとても人気がある。
友達も多く、常に誰かといるイメージだ。
今もクラスに入るなり数人に囲まれ、楽しそうに会話をしている。
キラキラ輝いていてまるで太陽みたいな人。
僕には彼が眩しすぎてまともに見ていられない。
羽純くんは恵まれているイケメンだ。
僕みたいな落ちこぼれの変人ではない。
その笑顔が眩しくて、僕は持参して来た小説に再び視線を向けるのだった。
***
マスクを付けるにあたって、この学校は中々都合が良かった。
何故かと言えば、この学校の体育は選択なので水泳を強制でやらされることがないのだ。
水泳をするとなればマスクを付けることができなくなってしまう。
なので僕にはとても有り難い制度だった。
さらに部活も強制ではなく、帰宅部という道があった。
何かやろうとすると、きっとどこかで「マスク外さないの?」という展開になってしまう。
中学の時はバスケ部に入っていたが、高校からは何にも入らず帰宅部になることを選んでいた。
しかし、やはりずっとマスクを付けているのは辛いものがあるのも事実だ。
「おーい!ボールこっちこっち!」
「走れ走れー!」
周りの楽しそうな声とは対照的に、僕は一人グラウンドで立ち尽くしていた。
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