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ショッピングモールへ3

「私たち大学生なんだぁ。ここの近くの大学なの」 「というか二人とも顔の偏差値高過ぎ!つい声かけちゃった」 「これからご飯なんだけど、一緒に食べない?奢ってあげるよ〜」 彼女たちの勢いに思わず怯んでしまう。 しかし隣のシンくんはまったく慌てた様子はなかった。半歩後ずさった僕を庇うようにして前に出る。 そして次にはいつもの爽やかで人懐っこそうな笑みを浮かべていた。 「すみません。自分たちこの後予定があるんです」 「え〜、そうなの〜っ?」 「どうしてもムリ?」 「ほんとすみません。じゃあ」 言うや否や、シンくんは僕の腕を掴んで歩き始めた。僕はされるがまま彼の後を付いていく。 後ろから女子大生さんたちの声が聞こえていたが、シンくんは構わず進んでいく。 その背中が、腕を握る手が心強く、まるで碧兄のようで安心する。 フードコートまで辿り着くと、シンくんはやっと足を止め、こちらを振り返った。 「いやぁ女子大生にナンパされるなんて、天野パワーすごいね」 「えっ!?あ、あれは僕じゃなくてシンくんに…」 「それよりお腹すいた〜。早く食べたいっ」 直ぐにまた歩き出してしまうシンくんを慌てて追いかける。 なんと言うか、とてもマイペースな人だ。 まぁそれに助けられているところもあるし、父さんと碧兄もマイペースだから慣れてるけど。 それから僕たちはラーメンを食べた。 僕が醤油ラーメンをすすっていると、シンくんが「なんか天野とラーメンって、不思議な感じするね」とよく分からないことを言ってきた。 僕が首をかしげると、彼は笑いながら「イメージの問題」だと答える。ますます意味がわからない。 その後はシンくんがアイスを食べたがり、二人でカップアイスを食べた。 冬にアイスが食べたいなんて変わっていると思ったが、彼曰く「冬に暖かい部屋で食べるアイスは格別」なのだそうだ。 確かにパクリと口に含んだバニラアイスは、夏に食べる時とはまた違う美味しさがあった。 パクパク口に運んでバニラの甘さを味わっていると、ふとシンくんが静かになったことに気がつき顔を上げる。 すると彼は、何故かこちらをジッと見つめていた。 「ど、どうかした…?」 やっぱり僕といるのは退屈だっただろうか。不安になって尋ねると、シンくんはニコッと笑みを浮かべる。 「ううん。別にー」 「……はぁ」 彼が何を考えているのかわからなくて、僕は何も言えず戸惑った。 なんだか恥ずかしくて俯きながらアイスを口に入れる僕に、シンくんは楽しそうに声をかけてくる。 「これ食べ終わったらさ、服見に行かない?」 「え。あ、うん」 「人の目が気になるなら、キャップとかどう?ちょっとは安心できるかもよ」 「あ。それいいかも」 「でしょ?」 本当に、シンくんはいい人だ。 こんな僕を気遣ってくれて、笑顔を向けてくれて。 彼と話していると、いつもは持っている警戒心とか恐怖心がスッと消えていく。 彼の太陽みたいな暖かさで溶けていく。 僕は最近はもう忘れ去っていた感情に、体の力みがなくなっていくのを感じていた。

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