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ショッピングモールへ9

俯いていた顔を上げれば、目の前に二人の男性がいた。 大学生だろうか。一人は長めの茶髪、もう一人は短めの黒髪で、どちらとも派手な印象を受ける。 「うお。近くで見るとマジでかわいいじゃん」 「ほら、やっぱ俺の言った通りだっただろ?」 向けられる意味を持った視線に体が強張る。 この感覚には覚えがあった。 中学生の頃、嫌という程経験した。 これは、避けなければならない視線だ。 「あの、僕、急いでるので…」 「そんなこと言わずにさぁ。ちょっと付き合ってよ」 「いや、あの…」 「じゃあ連絡先教えてよ。今度一緒に遊ぼ」 思ったよりも興味を持たれてしまったようで狼狽する。 僕が男だから尚更積極的にくるのかもしれない。 女性が被害を訴えることはできても、男の僕が堂々と助けを求めることは難しい。少なくとも僕はできない。 「今って帰り道なんじゃない?だったらさ」 「あの」 男性の言葉を遮ってかけられた声に、僕らは一瞬動きを止めた。 二人は僕越しに声を発した相手を睨みつける。 あからさまな敵意のこもった目だ。 僕はそれに萎縮し、後ろを振り返れない。 「……なに?誰だよお前」 「いや、ただ俺の友達に用があるんですよ」 「友達?」 眉を寄せて、男性たちはこちらをチラリと見た。僕は俯いたまま動けない。 「そう、友達です。だから返してもらっていいですか?」 「は?返すってなんだよ」 「いや、だって」 後ろの誰かが話しながらこちらに近づいて来るのが分かった。 いや、誰かなんて本当はわかっているのだ。 この状況で僕の友達だという相手は一人しかいない。 そして次には、すぐ後ろから声が聞こえた。 そう思ったら、いきなり背後から抱きしめられる。 「…っ」 息を飲む僕の肩に顎を乗せ、慎太郎くんは穏やかな声で言った。 「こいつ、俺のなんで」 耳元で聞こえた甘い声に、全身が熱を帯びる。 なんだ、これ。 こんな感覚、僕は知らない。

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