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ショッピングモールへ10
「っ、……なにが友達だよ」
「おい、行こうぜ…」
彼らはこちらに背を向けると、足早に去っていく。
その姿を呆然と眺めていると、耳元でふっと息を吐くのが聞こえた。
そして次には肩に額が押し当てられる。
「っ、慎太郎、くん…?」
「……顔隠してんのって、今みたいのが原因だった?」
「ぇ」
図星を突かれ、言葉が詰まる。
沈黙を肯定だと解釈したのか、彼は「そっか」と小さく呟いた。
「ごめんな。俺、知らずに…」
「し、慎太郎くんのせいじゃ…っ。一人になってから顔隠さなかったのは僕だし…っ」
さっきのことで分かった。
僕は何も変わっていはいない。
顔を出せばまた元みたいな被害に遭うだろうし、それを自分一人の力で防げもしない。
さっきだって慎太郎くんが助けてくれなかったら、きっといいように流されてしまっただろう。
男だというのに、なんて情けない。
「……取り敢えず、ベンチに座らない?一旦落ち着こう」
慎太郎くんに促され、近くにあった公園のベンチに座る。
僕が呆けていると、いつの間に買ってきたのか、慎太郎くんがお茶をくれた。
公園の自販機で買ってくれたのだろう。
「あの、お金…」
「いいから飲んで。虎介、今顔真っ青だよ」
「ぇ」
自覚がなかったから驚いた。
思っている以上にショックを受けているのかもしれない。
言われた通りお茶を飲む。
喉が潤っていく感覚に、自分は喉が渇いていたのかと今更気がついた。
「あ。そういえば、なんでここに…?」
お茶を飲んだことで少し冷静になった僕は、やっとその疑問を抱いた。
尋ねれば慎太郎くんは「あぁ」と思い出したように鞄から袋を取り出す。
「これ、この前虎介から借りた本。今日返そうと思ってたんだけど忘れててさ」
「え。また今度でよかったのに…」
「いや、でも結果オーライってことで」
おどけたように笑う慎太郎くんに、自然とこちらも笑みがこぼれる。
冷え切っていた心が、少しずつ熱を帯び始めているのがわかる。
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