23 / 216
危険人物
体育館に響くボールの弾む音、シューズが床に擦れる音。
それらを聞くのが僕は好きだ。
体に馴染んだ心地よいリズムが、余計なことを考える頭をすっきりとさせてくれる。
バスケを始めたのは小学生の時。
中学でバスケ部に入っていた碧兄に憧れて、自分も近所のクラブに入り始めた。
すぐにバスケそのものにのめり込み、練習に励んだ。頑張った分だけ上手くなれるのが嬉しかった。
中学に上がると迷わずバスケ部に入った。
碧兄はとっくに高校生だったから、一緒にプレーすることはできなかったが、そこが県大会常連校だったために、周りのレベルはかなり高かったと思う。
身長が低いために一年生の頃はなかなか成果を上げられないでいたが、バスケが好きなことには変わらなくて、なおも努力を続けた。
そして二年になり、新チームが始動すると同時に、レギュラーになることができた。あの時の喜びはいまだに覚えている。
タッパがない分ドリブルの素早さとパスやシュートの精度を磨いたのが正解だった。
レギュラーになってからは更に技術が向上し、自分たちが三年の時には全国大会に出場することができた。
あの日々は顔立ちの悩みがピークにきていたから、決勝で勝てた時にはいろいろとこみ上げてくる思いがあったのを覚えている。
「じゃあ今から二対二のミニゲームをやってもらうから、番号順にペアを組めー」
準備体操を終えてボール遊びをしていたみんなが番号順で二列に並び、隣同士でペアを組んでいく。
しかし今日僕の隣の人は風邪で休みなので、後ろが前に詰めることになる。なので僕のペアはというと……。
「お、俺のペアはマスクマンか」
「……」
ミルクティー色に染められた髪は、ただの髪質の僕とは違い、しっかりとセットされた柔らかさがある。
その整った顔立ちは、学校の女子から甘いマスクと評され絶大な人気を誇っていた。
彼の名は生駒 優璃 くん。
成績優秀で運動神経も抜群。
彼は慎太郎くん同様に恵まれたイケメンだ。
ただ一つ問題があるとすれば…。
「足引っ張ったら昼飯おごりな?マスクマン」
「……」
かなり、性悪なところがおありになる…。
ともだちにシェアしよう!