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危険人物3
今回はトーナメント形式らしく、みんな一位を目指して頑張っている。
僕の予想では、やっぱり慎太郎くんが一位になりそうだ。
「おい」
「え?」
試合が始まる直前、突然生駒くんに話しかけられた。
何かと思って体を強張らせると、彼は真剣な顔をしてこちらを見てくる。
「この試合、絶対勝つぞ」
「え?」
「そんで絶対に一位をとる。いいな」
「いち…っ」
完全に自分は除外していた僕は面食らってしまった。でも生駒くん、目が本気だ。
その時にふと思う。
生駒くんは意外にも、こういう勝負事では大小関係なく全力で取り組んでいる。
その理由は分からないけど、このクラスでは大体最後に慎太郎くんと生駒くんが競って勝敗が決まる感じなのだ。
そしてその結果は…。
「今日こそはシンのやつ負かせてやる」
「……」
要するに、対抗意識ということだろうか。
いつも二位でいることが嫌で、毎回勝負事では打倒慎太郎くんを掲げている?
そういうのあんまり興味なさそうなのに、意外に熱い人なのかもしれない。
「とにかくそういうことだから、足引っ張るなよ」
「……うん」
そうこうしていると、試合が始まる。
本来2on2をする場合、オフェンスはスクリーンプレイというものを多用するのが常識だ。
スクリーンプレーというのは、味方にマッチアップしている敵の動きを遅らせたり、範囲を制限して味方が移動したい場所への動きを助けるプレーだ。
まぁ当然、そんな技術的なことをやるわけがないのだけれど。
「クッソー!ボールよこせ!」
「やるかよバーカ」
突っ込んでいった石田くんに対して、生駒くんは右周りにドリブルし、相手を交わす。
その身のこなしに思わず「おお」と感嘆の声が漏れた。
流石は運動神経抜群の生駒くん。巧みなドリブルでディフェンダーをかわしている。
しかし二対一になるとそうはいかない。
「うわ、邪魔くせー…っ」
二人掛かりのディフェンスに、生駒くんが後ずさる。流石にキツそうだ。
二人に付かれると大変なんだよなぁ。
僕は背が低いからまず周りが見え辛くなるし、ぶつかられると簡単に吹き飛ばされたりしていた。
あぁ、もっと身長が欲しい。
そうすれば男らしさが出て襲われたりする必要もなくなるかもしれないのに。
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