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危険人物6
クラスのみんなに囲まれた空間で、ミニゲームが開始された。
初めにボールを持ったのは慎太郎くんたちのペアだった。
こちら側のゴールに向かってくる岡本くんを止めようと動くと、目の前に慎太郎くんが立ちはだかる。
「虎介ブロックー」
「ぅわっ」
自分よりも大きな体に足が止まった。
体の側面にほぼ直角になるように壁を作られ、僕の片足を慎太郎くんの股の間に入れるほど密着される。
どうやら慎太郎くんはバスケの基本が身についているようだ。
部活は入っていない気がするけど、どこで知ったのだろう。中学の時バスケ部だったのだろうか。
楽しそうな慎太郎くんに僕がわたわたしていると、あっという間に岡本くんが行ってしまう。
ドリブルが上手い。動きが早く、生駒くんでさえ追いかけるのがやっとだ。
「おい!なに止められてんだ!」
「す、すみません…っっ」
「だから優璃ー、虎介をいじめるなってー」
今僕を困らせているのは慎太郎くんだよ。
近すぎる距離に後ずさりながら心の中で訴える。
なんか凄い顔を寄せられているのだが、ブロックにおいてそれは意味があるのだろうか。
そうこうしている間に、岡本くんがレイアップシュートを決めてしまった。
あっという間の得点に、ギャラリーが湧く。
凄い。三人ともとても上手い。
またも久しぶりの感覚に体がそわそわする。あの頃の記憶が呼び起こされていく。
強いチームとの試合。厳しい練習。レベルの高い仲間たち。
その時、僕の中でカチッと何かがハマった気がした。
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