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危険人物7

ボールを持つ生駒くん。 相変わらず僕には慎太郎くんが付いている。 自分より体は大きいし、近い距離でしっかりとディフェンスされている。 でも、抜けられないこともない。 右のフェイントを入れて、素早く左の隙間を突破する。 驚愕の声を置き去りにして、生駒くんが咄嗟にパスしたボールをキャッチ。 慎太郎くんは動きに反応して付いてきている気配がした。 彼に追いつかれる前にドリブルで一気にゴールへ向かう。 ここからシュートを打とうとすると、きっと慎太郎くんに防がれてしまう。 それに生駒くんへのパスはできない。 今この流れのままゴールを決めるべきだ。 先程の岡本くんと同じレイアップシュート。 リングから落ちたボールが床をバウンドする。 その光景を一同は唖然と見つめていた。 「うぉおおすげー!一瞬だったぞ!」 「プロじゃん!プロがいるよ!」 「え!?あいつバスケ部じゃなかったよな!?」 一気に盛り上がる周りに虎介は体をビクつかせる。 なんだなんだとキョロキョロしていると、肩に腕が回された。 横を向くと興奮した様子の慎太郎くんが至近距離にいる。 「虎介こんなバスケうまかったのっ?マジすごいな!」 「え?あ、ありがとう…?」 「俺バスケ経験者じゃないからよくわかんないけど、すごいことはよくわかった!」 「あはは…、って、え!経験者じゃないの!?」 衝撃を受け声を上げる。 それに慎太郎くんは「うん。友達とやるくらい」と笑顔のままさらりと言った。 恐るべき慎太郎くんだ。 彼の天才肌は全てに適応されるのではないか。 そうしているとまた先生から声がかかり、僕たちはゲームを再開させるのであった。

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