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危険人物12
僕は相棒二人を人質に取られているので、今ここを逃げ出すわけにはいかない。
動揺する僕を無言で見つめていた生駒くんは、やがてふっと笑みを浮かべた。
その自然な笑みに不覚にもドキリとしてしまう。
「わかったよ。はい、どーぞ」
渡された相棒たちを、猫みたいに素早く取り返してすぐに顔に装着する。
ああ、やっぱり落ち着く。
お前たちは僕の精神安定剤だよ。
ある意味麻薬だ。眼鏡とマスク依存症だ。
「……シンが夢中になるわけだ」
「え?」
いきなり出てきた慎太郎くんの名前に首をかしげるが、彼はそれ以上は言わずに背を向けてしまった。
出て行こうとする彼に安堵から無意識に息を吐く。
顔を見られてしまったが、特に何も起きなかった。
取り敢えず生駒くんも慎太郎くん動揺安全な人だったことになる。
そう思って気を緩ませていると、唐突に生駒くんが振り返った。
反射的に体を強張らせる僕に、ニヤリとした笑みを浮かべる。
「俺さ。男を抱く趣味ねーけど、お前ならヤレそうな気がする」
「え。……え!?」
「じゃーなお姫様。シンのやつに食われないよう気をつけろよ」
愉快そうに手を振って、今度こそ生駒くんは帰って行った。
何やら厄介なことになったと、再び頭痛が襲ってくる。
どれだけ顔を隠しても、僕の不幸は防げないということなのか。
もし神様がいるのだとしたら、余程僕のことを嫌っていると見える。
もしかして前世に何か大罪を犯していたのかもしれない。
「最悪だ…」
一度大きな溜息を吐き、僕はトボトボと科学準備室を後にするのだった。
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