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引き立て役3
「と、とにかく僕は大丈夫だから。生駒くんのことは、気をつけておくよ」
「俺から優璃に言ってもいいけど」
「そ、そんなことしなくていいよ…っ」
もし向こうにその気がなかったら、ただの自意識過剰人間に思われる。
それで変な噂でも立ったら堪らない。
平穏な高校生活を目指す僕には、避けたいことだった。
それでもうこの話は終わりにしてもらった。
慎太郎くんは何か言いたげな感じだったけど、僕は強引に話を逸らす。
僕にとっては、顔立ちのせいで被害に遭うことは恥でしかない。
これ以上慎太郎くんに迷惑をかけたくないし、生駒くんの言葉が本心だったと認めたくはなかった。
というかさっきからこっちを見てキャッキャしている女子高生がいる。
慎太郎くんはイケメンだから、彼といるとそういった視線を向けられることは多い。
いくら顔立ちがいいからって、無遠慮に見ることはあまりいい行為ではないのではないだろうか。
かっこいい人ならジロジロ見ていいというのは間違っていると思う。
「慎太郎くんも大変なんだね」
「え?何いきなり」
「いや。いつも他人から見られるのって疲れるでしょ?」
中学まで僕もそうだったから苦労は分かる。
常に周りの視線を感じて落ち着く瞬間が少なかった。
人にもよるだろうが、あれは相当応える。
「んー。まぁ、確かに疲れはするかもね。でも今は」
「今は?」
「虎介といるから、周りなんて気にならないよ」
「…?」
そう言って慎太郎くんは、首をかしげる僕に眩しい笑みを浮かべるのだった。
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