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引き立て役6
リビングでソファーに座りボーッとしていると、携帯の通知が鳴る。
見れば案の定生駒くんからで、明日の集合場所と時間が指定されていた。
時間まで要望があるだなんて、彼は意外にも几帳面なのだろうか。
耐えきれずに溜息をつく。
明日なんて来なければいいのに……などと病んだことを考えていると、くすくすと笑う声が台所で聞こえた。
「友達相手にしては、随分深刻そうだな」
「……碧兄」
食器洗いをしていた碧兄は優しげな笑みを浮かべ、こちらを見ていた。
つい態度に出してしまっていたのに気付いて、内心慌てる。
「いつもの友達?慎太郎くんだっけ」
「あ、いや、別の人…」
慎太郎くんとは何度も遊んではいるが、家に来たことはないので実際に二人が会ったことはない。
それでも僕が学校のことで話すのは大体慎太郎くんのことなので、碧兄も彼のことは間接的に把握していた。
「へぇ。その子とも仲良いの?」
「う、うん。そんな感じ…」
不本意ながらお茶しに行くなんてとても言えない。
僕が返事をすると、碧兄は笑顔のまま僕の隣に座った。
無言でこちらを見つめてくる彼に冷や汗をかいていると、一度くすりと笑われ、頭に手を乗せられる。
「言いたくないのかもしれないけど、何かあったら言えよ?あんまり隠し事されると、兄ちゃん悲しいから」
すっかり見透かされてることに身を縮めて固まっていると、碧兄は諦めたように溜息をついた。
そして頭を撫でられ、彼は立ち上がる。
「まぁ最近は何故か虎介が被害に遭うこともないから、今回も何もないことを願ってるよ」
「う…っ」
“何故か”を強調して言われて動揺する。
碧兄は頭の回転が物凄く速いから、何かを気付かれいるのかもしれない。
彼の考えていることは相変わらず予想がつかなかった。
僕の知ってるイケメンはある意味謎な人ばかりである。
このままでは尋問のように白状させられかねないので、僕は強引に「おやすみなさい…!」と自室へ避難するのだった。
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