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引き立て役8

店内に入っから、僕は縮こまって生駒くんの後ろに隠れてしまっていた。 実際にメイドさんを見たのは初めてなのだ。 しかも同性とは思えないほどみんな綺麗で、これが生駒くんの言ってた男の娘なのかと納得する。 「ここは女装喫茶の中でもレベルが高いらしいよ」 「そ、そうなんだ…」 「でもまぁ、虎ちゃんが一番可愛いから大丈夫」 振り返ってそう話す生駒くんに、僕はキュッと眉を寄せる。 何が大丈夫なのだろう。 というか僕は別に彼ら(彼女ら?)に勝ちたいなんて微塵も思っていないからまったく嬉しくない。 「あら、優璃ちゃんいらっしゃい。その子がヘルプの子?」 男性の声が聞こえた。 聞き慣れない口調にビクつく僕は、さらに生駒くんの後ろに隠れる。 名札に店長とあるその人は、メイドではなく普通にシャツにズボンの一般的な喫茶店の制服を着ていた。 生駒くんと親しげに話し、その影に隠れる僕に微笑みを浮かべる。 怯える僕の頭に手を乗せた生駒くんは、「大丈夫怖くないぞ〜」とまるで小さい子にするみたいに扱ってきた。 それに不満気な視線を送ると、あっという間に前に出されてしまう。 隠れることができなくなってあたふたしていると、生駒くんは僕の両肩にポンっと手を乗せた。 「そっ。スゲー可愛い子連れてきたから、よろしく〜」 「ちょっ、生駒くん……!」 「だって本当じゃん。ほら、眼鏡とマスク外せって」 「うわっ」 いきなり生駒くんに変装グッズが取られてしまい赤面する。 両手で顔を隠そうとしたけど、生駒くんに両手首とも掴まれてしまった。 晒された僕の顔を見て、店長さんがその目を見開く。 抗議しようと仰ぎ見た生駒くんは、何故かとても得意げな顔をしていた。 「驚いたわ…。物凄いべっぴんさんじゃない!!」 「だろ?虎ちゃん、これはバイト代弾むぜ」 「何よもぅ〜っ。さっきと全然雰囲気が違うわね!」 「そうそう。虎ちゃん、日頃はクソ隠キャで通してるから」 「え〜っ、なにそれもったいな〜い!」 「……」 二人のテンションについていけず、僕は固まる。 その間に話はトントン進んでしまい、僕は控え室へ、生駒くんは客席へと案内されることになった。 「じゃーな虎ちゃん。楽しみにしてるわ」 「……」 一度訴えかけるような視線を送ったが、生駒くんはヘラヘラ笑っているだけだった。 これはもうどうにもならない。

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