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引き立て役9
控え室に入るとすぐに着替えることになった。
まだ心の準備が付いていない僕がカチカチに固まっているうちに、控え室にいたメイドさんたちに着せ替えられていく。
「わぁすごい!肌キレイだから化粧ノリがいいね!」
「おめめクリックリだぁ!羨ましい〜!」
「きゃあ、可愛い!お人形さんみたい!」
何人ものメイドさんに囲まれながら、みるみるうちに変身していく。
可愛い人たちがキラキラした目で見つめてくるから、僕はいたたまれなくて終始赤面していた。
「手足も細〜い」
「うひゃあっ」
服を脱がされ体を好き勝手触られる。
今までに被害を受けた人たちとは違い、まるで女子同士のようなノリに僕は狼狽した。
何だこれ、恥ずかしい!怖い!帰りたい!
「や、やややめてくださいぃ…!?」
「え〜ちょっとくらいいいでしょ〜?」
「きゃあ、僕にも触らせて〜!」
押し寄せる手に意識が遠のきそうになっていると、パンッと手を叩く音がしてみんなの動きが止まった。
「はいそこまで。あんたたち、子猫ちゃんが怖がってるわよ」
店長さんの注意にメイドさんたちはブーイングしたが、もう一度手を叩かれると渋々退散していった。
残った人に仕上げをしてもらい、完成した後に鏡を見ると、誰やねんとツッコミたくなるような自分が目の前にいた。
念のため手を振ってみると、鏡の向こうの人物も手を振り返してくる。
うわぁ、本当にこれ、僕なんだ。
「完璧よ子猫ちゃん!めちゃめちゃ可愛いわ!」
満面の笑みを浮かべて、店長さんは親指を立てる。
子猫ちゃんって、僕のことを言ってたんですね…。
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