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引き立て役13
お洒落な雰囲気の店内は、人気だというだけあり混んでいる様子だった。
それでも夕方だからか満席ではなかったようで、無事席に座ることができる。
僕がショートケーキ欲しさにそわそわしていると、生駒くんは笑って「あとちょっと我慢してなー」と子供を宥めるように言ってきた。
それで我に帰り赤面する。
いつの間にかショートケーキで頭がいっぱいになってしまっていた。
僕は色々なお店のショートケーキを食べ歩いているが、ここのはまだ食べたことがなかったのだ。
あの甘いクリームやイチゴやスポンジを想像するだけでヨダレが出そうになる。まるで餌をもらう前の犬だ。
店員さんを呼んで生駒くんはコーヒー。
僕はミルクティーとショートケーキ5つを注文すると、店員さんは少し戸惑った様子で注文を聞き返してきた。
「5つで、よろしかったですか…?」
「はい」
「えっと、お持ち帰りとか…?」
「いいえ、ここで食べます」
「……かしこまり、ました」
動揺した様子の店員さんがいなったところで、生駒くんがクスクスと笑った。
首をかしげると、彼は面白そうに店員さんの方へ視線を向ける。
「あの人、めっちゃ戸惑ってたな」
「え?なんで?」
「なんでって、信じられないからだろ」
信じられないとは何がだろう。
理解できずに眉を寄せると、生駒くんは愉快そうに笑って僕を指差した。
「こんなおチビの男子高校生が、ショートケーキを5個も食べること」
「え」
盲点だった指摘に固まると、「マジで無自覚かよ」とさらに笑われる。
「普通常識的にそうだろ。ケーキ5個はキツイって」
「いやでも、食べ放題の時とかみんな食べるよね…?」
「あれはサイズとかも小さいじゃん。虎ちゃんは食べ放題、いくつ食べんの?」
「……20、くらい?」
「ブッッ」
噴き出す生駒くんにパチパチと瞬きを繰り返した。
何がそんなに面白いのだろう。
彼のツボが分からない。
確かに今までも同じような注文をすると、聞き返されることは多々あった。
でもそれは聞き取れなかったとか、確認する決まりなのだと思っていたのだ。
自分の頼む量が人より多いことに今更気づき、少し恥ずかしさを覚える。
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