47 / 216

引き立て役13

お洒落な雰囲気の店内は、人気だというだけあり混んでいる様子だった。 それでも夕方だからか満席ではなかったようで、無事席に座ることができる。 僕がショートケーキ欲しさにそわそわしていると、生駒くんは笑って「あとちょっと我慢してなー」と子供を宥めるように言ってきた。 それで我に帰り赤面する。 いつの間にかショートケーキで頭がいっぱいになってしまっていた。 僕は色々なお店のショートケーキを食べ歩いているが、ここのはまだ食べたことがなかったのだ。 あの甘いクリームやイチゴやスポンジを想像するだけでヨダレが出そうになる。まるで餌をもらう前の犬だ。 店員さんを呼んで生駒くんはコーヒー。 僕はミルクティーとショートケーキ5つを注文すると、店員さんは少し戸惑った様子で注文を聞き返してきた。 「5つで、よろしかったですか…?」 「はい」 「えっと、お持ち帰りとか…?」 「いいえ、ここで食べます」 「……かしこまり、ました」 動揺した様子の店員さんがいなったところで、生駒くんがクスクスと笑った。 首をかしげると、彼は面白そうに店員さんの方へ視線を向ける。 「あの人、めっちゃ戸惑ってたな」 「え?なんで?」 「なんでって、信じられないからだろ」 信じられないとは何がだろう。 理解できずに眉を寄せると、生駒くんは愉快そうに笑って僕を指差した。 「こんなおチビの男子高校生が、ショートケーキを5個も食べること」 「え」   盲点だった指摘に固まると、「マジで無自覚かよ」とさらに笑われる。 「普通常識的にそうだろ。ケーキ5個はキツイって」 「いやでも、食べ放題の時とかみんな食べるよね…?」 「あれはサイズとかも小さいじゃん。虎ちゃんは食べ放題、いくつ食べんの?」 「……20、くらい?」 「ブッッ」 噴き出す生駒くんにパチパチと瞬きを繰り返した。 何がそんなに面白いのだろう。 彼のツボが分からない。 確かに今までも同じような注文をすると、聞き返されることは多々あった。 でもそれは聞き取れなかったとか、確認する決まりなのだと思っていたのだ。 自分の頼む量が人より多いことに今更気づき、少し恥ずかしさを覚える。

ともだちにシェアしよう!