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引き立て役14

でもそれでもケーキは食べたかった。 こういう時には周りの視線が気にならない。 お金だって払ってるんだから、僕がいくつ食べようと自由だろう。 まぁ今回は生駒くんの奢りなんだけど。 「虎ちゃん。食べるならそれ、取った方がいいんじゃない?」 「え?」 言われてマスクのことかと思い、確かに外す必要があったので渋々そうする。 もともとマスクが苦手な僕は、外したことによる開放感にふーっと息を吐いた。 「眼鏡も外したら?」 「え?」 いきなり言われて顔を上げると、頬杖をついた生駒くんが何でもないような顔でこちらを見ていた。 バッチリ視線が合ってしまい、反射的に俯いてしまう。 「いや、眼鏡はその…」 「それ度は入ってないんだよな?」 「……うん」 「なら外せば?ずっと付けてると目ぇ疲れね?」 まぁ、それはそうなのだが…。 顔を隠している理由を言うのも憚られて黙り込んでいると、不意に目の前に手が現れた。 それに反応する前にサッと眼鏡が外される。 呆気にとられる僕に、生駒くんはニヤリと笑うと眼鏡を僕の目の前でゆらゆら揺らした。 「この間は眼鏡没収」 「な、なんで…」 「んー?なんか折角二人でいるのにもったいねぇじゃん」 「もったいない…?」 わけが分からず目をパチパチさせていると、「無自覚こわ」と笑いながら鼻を摘まれる。 「ぅむっ」 「大丈夫だって。俺が守ってやるから安心しろよ」 「え?」 「顔隠してるのって、そういうことだろ」 す、鋭い…。 流石は慎太郎くんと並ぶ生駒くんだ。 こちらは何も言っていないのにすっかりお見通しである。 「まぁ顔を隠すのは間違ってないんじゃね。それで被害に遭われても嫌だし。みんなは知らないこと知ってるのって、特別感あるしな」 そう言って笑う顔はとても無邪気で、偶に見せる彼の素直な表情は少しドキリとさせられる。 「おまたせしましたー」 「…!!」 そうこうしていると、注文したものが運ばれてきた。 目の前にケーキがくると、僕は一瞬で意識を切り替え目を輝かせる。

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