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引き立て役17

そこまで言って、生駒くんはコーヒーを一口飲む。 少しの間静寂が続き、すぐに生駒くんが口を開く。 「って、なんで俺、こんな話ししてんだろ。なんか変な空気になったし。ごめ…」 「生駒くんは」 気づけば声が出ていた。 生駒くんが目を見張る中、自分も内心ビックリする。 僕の言葉の続きを待っているのか、生駒くんは黙って僕を見つめていた。 少し気が引けたが、ここで止めるのも違う気がして、僕は思ったことを口に出す。 「生駒くんは、頑張ってるよ。努力家なんだなって、なんとなく思ってた」 「は?」 ポカンとした後、生駒くんの顔が少し赤らむ。 僕が首をかしげる中、彼はガシガシと頭をかいた。 「わぁ、なんだよそれ…。そんなこと思われてんのかよ…、かっこ悪」 「なんで?努力することって誰にでもできることじゃないし、僕はかっこいいと思うよ」 人というのは、頑張ろうとしても上手くいかないことが殆どだ。 そんな中で、小さい頃から今まで努力し続けてきた生駒くんは凄いと思う。 心から思ったことを口にし微笑むと、生駒くんは更に顔を赤らめた。 僕がどうしたのかと尋ねようすると、凄い勢いで顔をテーブルに打ち付ける。 「えぇ!?生駒くん!?」 「……」 仰天する僕に構わず、彼は突っ伏したまま頭を抱える。 どうすればいいのか分からずに僕が動揺していると、生駒くんはブツブツと独り言を言い始めた。 「やばいだろ、それ…。あー、マジか。ただの興味本位だったのに。張り合ってただけなのに。……マジできた」 「あ、あの、生駒くん…?」 「かっこいいって!」 「…!?」 バッと顔を上げた生駒くんは、真っ直ぐに僕を見つめてくる。 その勢いに体をビクつかせる僕に、彼は更に顔を近づけた。 「かっこいいって、シンよりっ?」 「え?」 言われて、また彼が張り合い始めたのに気がつく。 どう返せばいいのだろう。 生駒くんの方がかっこいいと言った方がいいのだろうか。 でもそうすると慎太郎くんに申し訳ない。 「あ、えっと……ど、どっちとも凄いかっこいいよ?」 結局どっちつかずなことを言ってしまい、生駒くんはちぇっとつまらなそうな顔をした。

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