56 / 216
ワンコ系男子4
「驚いたぁ。まさかこんなに綺麗な子だったなんて」
「だろ〜?」
「なんで優璃が自慢げなの」
すっかり僕のホームとなった東階段で、また強引に眼鏡とマスクを取られてしまった僕は縮こまっていた。
四宮くんに顔を凝視され、つい俯いてしまう。
縋る思いでチラリと生駒くんを見たら、彼は確かに自慢げに笑みを浮かべていた。
「なんか別次元の綺麗さって感じ。ね、頬っぺた触ってもいい?」
「え?あ、ど、どうぞ…」
「わぁ、お肌スベスベ!なんかスキンケアとかしてる?」
「い、いえ特に…」
「嘘ー!?じゃあ髪の毛は?すごいサラサラだよね〜」
頬やら髪やらを触られ、僕は困惑するばかりだ。
生駒くんはニタニタ笑ってるだけでちっとも助けてくれない。
次には僕の頬を両手で包み込んで顔を近づけてきた。
ジッと顔を見つめられ、僕は汗を流す。
そうしていると、彼は不意に小さく微笑んだ。
「なるほどね。優璃が夢中になるわけだ」
「え?」
その笑みがどこか寂しそうに見えて、僕は固まる。
どうしたのかと尋ねようとした時、五分前のチャイムが鳴った。
四宮くんはハッと我に帰ると、元の優しい笑顔に変わる。
「もう教室戻らなきゃね。本当にバイトの件、ありがとう。あと、これから僕のことは志音って呼んでよ」
「あ、じゃあ僕も虎介で…」
そう返すと、彼はニコッと笑って頷いてくれた。
その笑みの眩しさは慎太郎とはまた違う輝きがある。癒しだ。癒しのオーラがすごい。
「優璃に何かされたら言ってね。僕が守ってあげるから」
「ヒッデー。そんな人を野獣みたいに言うなよな」
「だって本当のことでしょ」
二人の間には、とても親しげな雰囲気を感じ取れた。
生駒くんが彼とは家族みたいなものだと言っていたのは本当らしい。
でもそんな中に感じる違和感はなんなのだろう。
教室へと向かう二人の背中を見ながら、僕は無意識に抱いた感覚に疑問を抱くのだった。
ともだちにシェアしよう!