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ワンコ系男子7

全身から嫌な汗が流れ出す。 どうしよう。凄くこっちを見てる。 思いっきり顔を見られている。 何度も何をやっているんだ僕は。 ついバスケの誘惑に負けてこんなことを…。 どう弁解していいか分からずに困惑する。 未だこちらを凝視している名塚くんに、僕はあわあわと手を動かした。 「あ、あの、これは、その…」 「今の」 「……え?」 彼が何か呟いたように聞こえて動きを止める。 俯いている彼は表情が分からなくてドキドキしていると、次には勢いよく顔を上げ満面の笑みをこちらに向けて来た。 「今のシュート!めっちゃ凄かったッス!!あなた一体何者ですか!?」 「…………え?」 まさか、そう来るのか。 どうやら名塚くんは、今の僕とさっきまでの僕を同一人物と判断していないらしい。 確かに顔を隠している時とは大分変わるかもしれないが、これは、なんというか…。 「名前は!?学年は!?バスケ部にいないッスよね!?なんでッスか!?まさか転校生!?」 「ちょ、ちょっと落ち着いて…!?」 凄い勢いだ。 グイグイと詰め寄られ、僕は後ずさりながらストップをかける。 そうすると詰め寄るのは止めてくれたが、至近距離でキラキラと輝く瞳に見つめられた。 これは完全にロックオンされている。 ここでわざわざ正体を名乗ってしまうのも気が引けた。 ではどうしよう。幾らなんでも人一人の存在をでっち上げることはできないのではないか? 「さっきのシュート!マジで凄かった!あんな安定したフォーム見たことない!!」 「あ、あはは…」 こんなに面と向かって絶賛されると恥ずかしい。 本当にどうしたものかと困り果てていると、不意に体育館の外から名塚くんを呼ぶ声がした。 それにハッと我に帰った名塚くんが前に傾けていた上体を起こす。 「あ、ヤベ。先生から呼び出し食らってるんだった」 そう言って名塚くんは困り顔を浮かべる。 彼はその人懐っこさから先生にも人気がある。 だからその呼び出しというのは何か頼まれ事でもされているのだろう。 向かおうとしながらも、まだ話し足りないようでこちらに視線を向けてきた。 キョロキョロしている名塚くんに、僕は逃げるなら今だ!と無理やり笑みを浮かべる。 「僕もこれから用事があるので、行ってください」 「でも…」 「さっきのシュートはほんと、ただのマグレなので。じゃ、僕はこれで」 そうして殆ど逃げるように体育館から出る。 すぐに眼鏡とマスクも付け、止まらずに歩き続けた。幸い後ろから追いかけてくる様子はない。 危なかった。本当に危なかった。 今になってまた汗がダラダラと流れ出し、真っ赤になった頬に両手を押し当てる。 今後面倒なことにならなければいいのだが。 この嫌な予感はなんなのだろう。 僕は悪運が強いから、心配でならない。 心臓がバクバクいうのを感じながら、僕は足早に教室へと向かうのだった。

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