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偽り2

「あ!そういえば聞いてよ二人とも!」 その時何かを思い出したように声を上げた名塚くんは、更に眩しい笑みを浮かべた。 彼のテンションに僕が汗を流す中、名塚くんは話し始める。 「昨日さ!凄い人に会っちゃったんだよ!」 「凄い人…?」 つい聞き返すと、大きく頷いた名塚くんは目をキラキラと輝かせた。 「天才バスケ美少年!!」 なんだそのネーミングは……漫画のタイトル?と苦笑いを浮かべていたが、次には「ん?」と違和感を感じて動きを止める。 昨日?バスケ? ポク…ポク…ポク…チーン 「ハッッ!」 瞬間ビキィ!と体が固まる。 慎太郎くんも何か引っかかったらしく、隣からチラリと視線が向けられた気がした。 そんな二人の変化に気づくことなく、名塚くんは話し続ける。 「掃除の時、ゴミ出しに行った虎介を体育館で待ってたらトイレに行きたくなったんだよ。それで一旦トイレに行って、体育館に戻ったら…」 そこまで言うと、名塚くんはシュッと両手をおでこの前に構える。シュートのポーズだ。 「中に人がいて、バスケットボール持っててさ!こうボールを構えて、スッ!て投げて、シュンッ!て吸い込まれるみたいにゴールに入ってったの!マジで凄かった!!その後声かけたんだけど、すぐいなくなっちゃって……。だから俺!何が何でもその人にまた会いたいんだ!!」 話を聞き終え、頭痛を覚えて頭を抑える。 どうしよう。それってもしかしなくても僕のことを言っている気が…。 彼がそこまで僕に興味を持ってしまったなんて思わなかった。 自分の失態に激しく後悔し、放心する。 慎太郎くんはどう思っただろう。 彼も何か察したことは間違いなかった。 でも彼は特に反応するわけでもなく、「へぇ」と軽い相槌を打っている。 顔を見られるという失態を犯した僕に、慎太郎くんは呆れるだろうか。 もしくは特に気にしないだろうか。 考えてみれば僕のことなど、慎太郎くんにとってはなんの関係もないのだ。 だから僕が顔を見られようがどうということも…。 ……あれ。なんで僕、ちょっと傷ついているんだろう。 僕は別に、慎太郎くんに心配して欲しいわけではない。 むしろそんなことはされたくないはずだ。 僕のせいで彼に迷惑をかけたくはないし、いつもみたいに助けもらってばかりではいけないと思う。 それなのに何故、こんな気持ちにさせられるのだろう。 自分が自分で、よく分からない。 そこからの名塚くんの話は、よく耳に入ってこなかった。 そのせいで虎介は、慎太郎の様子がいつもと少し違うことに気づけない。 彼の纏う空気には、いつもの陽だまりのような暖かさは存在しなかった。

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