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温もり7

彼がお風呂に入っている間にご飯を作る。 以前に苦手な食べ物はないと言っていたから、その点は大丈夫だろう。 お弁当のおかずをあげたことはあるけど、こうしてちゃんと料理を食べてもらうのは初めてで緊張する。 意気込んで調理していると、碧兄にくすりと笑われた。 不思議に思って首をかしげると、彼は手をひらひらと振った。 「いや、ごめん。なんか可愛くって」 「な…っ」 張り切っていたのがバレたのだろうか。 恥ずかしくて僕はキュッと眉を寄せると、碧兄は「ごめんごめん」と言いながらまた笑った。 そんなやり取りをしていると、慎太郎くんが部屋に入ってくる。 碧兄の服はサイズが合ったようだ。クリーム色のトレーナーに、グレーのスウェット。 完璧部屋着ではあるが、明日は土曜だし泊まってもらおうと思ったのだ。 何となく慎太郎くんは、今日家に帰らない気がした。 だったら泊まってもらった方がいい。 まだ彼との気まずさはあるけれど、放っておくことなんてできなかった。 「サイズは大丈夫そうだね。それ寝巻きに使って、今日は泊まりな」 「……ありがとうございます」 渡された服からして、なんとなく予想していたのだろう。慎太郎くんは申し訳なさそうに頭を下げた。 やっぱり家に帰る気はなかったようだ。 彼がそうしたいのなら否定しないが、少し悲しくなる。 沈みそうになる気持ちに気づいて、僕はブンブンと頭を振った。 辛いのは慎太郎くんなのに、僕が落ち込んでどうする。 「慎太郎くん。もうちょっとでご飯できるから待ってて」 務めて明るい声で言えば、彼はこちらに視線を向けた。 そして台所に置かれたワンホールのショートケーキに首をかしげる。 しまった。1つだけ今日食べようと残していたのだ。 「誕生日か何か?」 「う、ううんっ。気にしないで…!」 「?」 慌てる僕に首をかしげる慎太郎くん。 碧兄はそんな僕らをくすくす笑っていた。

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