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温もり8
夕飯はクリームシチューを作った。
テーブルに並べて、三人で食卓を囲む。今日父さんは帰って来ないみたいだ。
もし父さんがいたらしつこく慎太郎くんに絡みそうなので、内心ホッとする。
「シチュー、大丈夫だった?苦手な具材とか」
「ううん、大丈夫。凄い美味しそう。やっぱり虎介は料理上手なんだね」
褒められて嬉しくなり、表情筋が緩んでしまう。
なんで彼に褒められると、こんなに幸せになるのだろう。
胸の奥がポカポカして、ほわんとだらしない笑みを浮かべてしまう。
「冷えた体には、温かいものが一番だと思ったんだ。身も心も温まるよ」
そう言って微笑む僕を見つめて、慎太郎くんは眩しそうにその目を細めた。
ご飯を食べ終えると、碧兎さんがよしっと席を立った。
「泊まるなら布団がいるよね。押入れに1つあるからそれを使おう」
「あ、じゃあ僕が」
そう言って立ち上がった虎介を制して、碧兎さんはこちらを見る。
その表情には、どこか含みがあった。
「虎介は食器洗いお願い。慎太郎くん。悪いけど、手伝ってもらっていいかな」
そんなの悪いと慌てる虎介に、俺は笑って「大丈夫だから」と言い立ち上がった。
虎介をリビングに残して、二人で階段を上がる。
よく掃除された家だ。
とても男三人での生活だとは思えない。これだけでも、虎介や碧兎さんがしっかりしているのが分かる。
聞いたところ、父親は自由人らしいけど。
「虎介と仲良くしてくれてありがとね」
階段を上りながら声をかけられて、俺は碧兎さんに視線を向けた。
今は背中しか見えないが、その顔は虎介のように綺麗でありながら、男としての魅力も兼ね備えている。
きっと異性にはもちろん、同性にも好意を持たれることがあるのではないだろうか。
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