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温もり11
ぼんやりとした意識のまま目を開ければ、目の前に慎太郎くんがいた。
それに驚いて、一気に意識が覚醒する。
確かさっきまで洗い物をしていて、やることもやってソファーに座ったはずだ。
それなのに何故、こんなことに…。
これはもしかしなくても、自分は眠ってしまったのだろうか。
「あ、あの…慎太郎くん…」
「うん。おはよう虎介」
いつもの陽だまりのような微笑みを向けられて、僕はカァッと赤面する。
恥ずかしい。
慎太郎くんと碧兄は布団の用意をしていたというのに、呑気に眠っていただなんて…!
それに寝顔を見られてしまった!
きっと間抜け面だったに違いない。
ああ、穴があったら入りたい気分だ。
「お、お見苦しいところを…っ」
ペコペコ頭を下げれば慎太郎くんが通常運転、いや寧ろいつもよりキラキラしてる笑顔を浮かべてきた。
とてもご機嫌だけど、何かあったのだろうか。
「見苦しくなんて微塵もないよ。逆にお礼を言いたいくらい。凄くいいものが見られた。元気が出たよ」
「い、いいもの…?」
訳が分からず首をかしげる。
そうすると、ニコニコと笑みを浮かべていた慎太郎くんが俯いてしまった。
元気が無くなってしまった彼に狼狽する。
どうしたのかと顔を覗き込めば、彼は困ったような笑みを浮かべていた。
「慎太郎、くん…?」
「……ほんと、今日は助けられてばっかだな。マジで俺、駄目駄目でかっこ悪い」
何のことだかさっぱりな僕は目を瞬かせる。
助けられてって、僕に?
かっこ悪いって、慎太郎くんが?まさか。そんなこと有り得ない。
「慎太郎くんは、かっこ悪くなんてないよ」
「そんなことない。虎介に迷惑かけっぱなしだ」
「それを言ったら、僕はいつも慎太郎くんに迷惑をかけてる」
「虎介が?なんで?そんなことないよ」
途端顔を上げ心底驚いたように否定する慎太郎くんに、僕はきょとんとしてしまう。
なんだろう。全然話が噛み合わない。
「だってお弁当だって、わざわざ僕と食べてくれるじゃないか」
「それは虎介と食べたいからだよ。俺がしたいから勝手にしてるだけ」
「遊びにだって、誘ってくれる。僕と遊んでもつまらないはずなのに」
「そんなことない。虎介と遊ぶのは楽しいよ」
「でも……」
「虎介」
両頬を、彼の手が包み込んだ。
僕はハッとして、思考を停止させる。
真っ直ぐその瞳に見つめられて、何故だか凄く安心した。
黙って見つめ返すと、彼はふっと微笑んで再度口を開く。
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