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温もり13
その瞳をふっと細め、彼は微笑む。
そこに先程のような偽りはない。
「俺さ。前も言ったけど、虎介が好きなんだ」
「…っ」
ドクンと、心臓が高鳴る。
「好き」という言葉が、頭の中でリフレインする。
この胸の締め付けられる感覚は何なのだろう。
泣きそうになっている自分がいて、戸惑い、心が揺れる。
「確かに虎介の素顔を見て、興味を持ったよ。でも何より、その目に惹きつけられた」
「……目?」
問いかければ彼は頷き、僕の目の下をそっとなぞる。
不思議と不快感は感じなかった。
「どこまでも澄んだ、綺麗な目だ。真っ白くて、穢れを知らない目。それは俺にはないものだったから、……無意識に君を求めてた」
僕の頬に手を添えて、彼は困ったように笑う。
「この感情の始まりは、きっと憧れだったんだ」
彼の言葉に、僕は目を見開いた。
僕も慎太郎くんに、ずっと憧れを抱いていた。
いつも明るくて、まるで太陽のような彼は落ちこぼれの僕なんかとは違うと。
でも彼には彼の抱えているものがあった。
そんな中で彼は辛いのも我慢して、ずっと…。
胸の辺りがざわつく。
僕はどうしてしまったのだろう。
彼の深い部分に触れて、知らなかった彼をしれて、嬉しいと思っているのは分かる。でも今は別の感情が僕を混乱させていた。
頬に添えられた手に、擦り寄ってしまいそうになる。
おかしい。どう考えてもおかしい。
もっと彼に、触れて欲しいだなんて…。
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