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芽生える想い2
「うーん。つまり虎くんは、シンに恋してるってこと?」
「ブッッ!?」
いきなりとんでもないことを言われて、飲んでいたオレンジジュースを噴き出しそうになった。
今僕は、志音くんと二人でマックにいる。
何故そんなことになっているのかといえば、偶々僕が志音くんと生駒くんの喧嘩に巻き込まれたからだ。
授業も終わり帰ろうとしていた僕は、言い争っている様子の2人を見かけた。
彼らは喧嘩をしていることが多い。この前も「優璃!冷蔵庫の中のアイス食べたでしょ!」「は?食べてねーし」「うそ!他に食べる人なんていないじゃん!」「カイが食べたんじゃね?」「カイはずっと庭にいるよ!」という言い争いをしていた(カイは志音くん家が飼っている柴犬らしい)。
今日は何について喧嘩しているのだろう、と眺めていると、不意に志音くんと目が合った。
その途端「あ!」という顔を彼にされたが、僕は首をかしげるしかない。
なんだ?僕、何かしたかな?
正直逃げたかったが、すぐにこちらへやって来た彼に腕を掴まれる。
そして彼は、生駒くんに向かって『もうバカ優璃なんて知らない!虎くんと行く!』と言い放った。
そうしてやって来たマックで事情を聞いてみると、どうやら志音くんは今日新発売のシェイクが飲みたかったらしい。
でも生駒くんには「志音となんて殆ど毎日飯食ってんじゃん。なのに外食?新鮮味がない。そういうことは虎ちゃんとかとしたい」などとよく分からない自論で断られたそうだ。
それで言い合いをしていたら偶々僕が現れて、嫌がらせを込めて僕と2人で……ということみたいだ。
まぁ僕も今日は父さんと碧兄の帰りが遅いので、ご飯作る必要はないから平気だけど…。
「あの、生駒くんとは大丈夫なの?気まずくなったりとか…」
「ああ平気平気。こんなのしょっちゅうだから、なんてことない。虎くんが心配することじゃないよ」
そう言って微笑まれる。
今日はいつもと髪型が違った。
聞いてみるとハーフアップと言うのだそうだ。聞いたことはあるけど、どういう髪型なのか知らなかった。僕にはない知識を持つ彼に感心する。
「可愛いね。志音くんはおしゃれさんだ」 と素直に感想を言うと、「え。なにそれ可愛い」と返されてしまった。
可愛いのは志音くんなのに、どういうことだろう。
というか、いつの間にか呼び名が変えられているな。
志音くんは何処か生駒くんと似た何かを感じる。
流石家族のように育ってきた2人。こんなことを言うと嫌がられそうだから言わないけど。
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