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芽生える想い3

そんなこんなで僕は志音くんと2人でマックにいる。 食事中なのでマスクは取った。眼鏡はかけていたのだが、志音くんの無言の圧が怖くて渋々外している。 最近ガードが甘過ぎるだろうか。 そうは言っても、やっぱりずっと付けているのはキツい。 眼鏡をかけていると酔って大変なのだ。授業中も、実はこっそり上にずらして板書をしている。 始めの頃、それこそ慎太郎くんに素顔を見られる前は、気が張っていたお陰でもっていたようなものだ。 知り合いも増え出した今、そこまで意志が強くない僕にはとても続けられない。 こういう事言ってると、また慎太郎くんに怒られそうだな。 と、慎太郎くんで思い至った。 彼に対して抱く感情が何なのか、ずっと分からないでいる。 そこで僕より知識人の志音くんなら知っているだろうかと、相談してみた。 そして話し終えた後の彼の第一声が、先程のものである。 「こ、こ、恋だなんて…っ、え、そんな、いやいや…っ」 混乱して両手で頬を包みあわあわする。 そんな僕を頬杖をつき見つめていた志音くんは、「天然のあざとさって、何でこんなに可愛いんだろ〜」とニコニコしていた。何のことを言っているんだ? というか何故そんなにサラッとしている? 僕が慎太郎くんに恋していたとしたら、それは驚くところではないのか? あまりに志音くんがあっさりとしていて、調子が狂ってしまう。 「だ、大体僕は男で、同性の慎太郎くんを好きになるはずないと思うけど…」 「えー?でも最近は同性愛も珍しくないんじゃない?というか虎くん自身、同性から言い寄られたりするでしょ」 「そ、それは…っ、恋とかとは違うものだと思うし…」 「ま。僕は今、絶賛片想い中だけどね」 「……え?」 続いていた会話が止まった。 言われたことがすぐ飲み込めなくて固まる。 ちょっと待って。 片想い中って…、それはこの流れで言うと… 「同性にってこと…?」 「うん」 これまたあっさりと肯定し、彼はニコッと微笑んだ。

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