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芽生える想い7

「まず重心を落として、上半身は斜めにならないようにまっすぐ保ってください」 「ん。なんで敬語?」 志音くんからツッコまれてしまったが、何故かそうなってしまったんだから許して欲しい。 ンッンー。と咳払いをし、気を取り直して説明を続ける。 「えっと、重心を落としてッスね!」 「うん。そのまま真上にジャンプして、それと同時に下げていた手を上げて、ジャンプが頂点に達したところでボールを離す」 「ジャンプして、ええっと…」 「シュートは指先が凄く重要で、指先の感覚でシュートが入るか外れるか分かる人もいるくらいなんだ。あとただただシュートを打つんじゃなくて、手首でスナップをかけるんだけど、これは押し出すとも違う感じでパスと一緒で回転をかけると飛びやすくなるよ」 「指先…スナップ…」 「着地はその場に着地できるように。前に飛んじゃうとチャージングを取られる可能性があるから気をつけて。高い打点からシュートが打てるからディフェンスにカットされにくいメリットがあるけど、空中でシュートを打つのはボディバランスが凄い重要になってくるから…」 「ストップストーップ!ワンコくん頭から煙出そうになってるから!」 「へ?」 志音くんに止められた僕はハッと我に返った。 彼の言った通り、名塚くんがパンク寸前の状態になってクラクラしている。 しまった。つい丁寧に教えようとし過ぎて彼を困惑させてしまった。 「ご、ごめん。分かりづらかったよね…」 「え?いやいやっ。これは師匠が悪いんじゃなくて俺がバカだからなんで、そんな落ち込むことないッスよ!」 「物凄く清々しいねワンコくん」 元気よくそうフォローしてくれた名塚くんに、志音くんはある意味感心していた。 口で説明しているだけじゃダメだとしたら、どうすればいいのだろう。 そうしてうんうん考えていると、ふとあることを思い出す。 名塚くんは物事を説明する時、擬音を使っていたことがあった。 つまり彼は物事を理論的に考えるのではなく、感覚でやっていくタイプ。 なら細かいことを言うのではなく、大まかに伝えて実際に見せた方がいいかもしれない。 「ごめん名塚くん。もう一回やってみよう」 巻いていた黒チェックのマフラーを外して、僕はさっそく実践に移した。

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