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文化祭2

「というわけで、今回の文化祭でウチのクラスは《ロミオとジュリエット》をやることになりましたーっ」 級長である竹内くんの言葉に、クラスのみんなはまばらに拍手をした。 今は事実上自習の時間になっていた。先生は出張でおらず、生徒のみで話は進んでいく。 1年が劇をやるのは珍しいらしい。普通は3年生が主にその役割なのだが、僕らのクラスは気合が入っている。 この学校では文化祭が終わったあと、どのクラスの出し物が一番だったか投票で決める仕組みがあるそうだ。 投票していいのは自分のクラス以外。優秀賞やユニーク賞など、いくつかの種類の賞があり、一番のクラスは最優秀賞が貰える。 《ロミオとジュリエット》はかなり大堂のものだが、こういうのは定番をやるのが一番受けがいい。そう言ったのは優璃くんだったか。 彼は慎太郎くんに対して負けん気が強いのは知っていたが、元々負けず嫌いなのかもしれない。 まあそうじゃなかったら慎太郎くんと張り合おうとか考えないか…。 「で。肝心のキャストだけど、なんか希望とかある?」 竹内くんの質問に、ざわざわとみんなが話し合い始める。 「お前ジュリエットやれよ」「メイン以外に何役があった?」「演技するとかキンチョーするわー」などと楽しそうだ。 慎太郎くんは必然的にロミオ役になる雰囲気だった。 この劇をやるとなった時点で、慎太郎くんか生駒くんがロミオ役の流れが何となくできていた。 でも生駒くんが「100パー志音にネタにされるからパス」と断ったので、何も言わない慎太郎くんがやる前提で話が進められている。 慎太郎くんは相変わらず明るい笑みを浮かべていた。 彼はロミオ役をやることをどう思っているのだろう。嫌だったりしないのかな? でも器用な彼なら、ロミオ役もすんなりこなしてしまう気がする。きっと凄くかっこいいはずだ。 そんな中で僕は今、1人ひっそりと読書をしている。 隠キャの僕は裏方で静かにやり過ごすのが得策だ。役者はクラスでも中心的な立場である人たちで事足りる。 そう思って僕は、今読んでるミステリー小説に没頭しようとした。 「あのー。ジュリエット役は天野くんがいいと思いまーす」 「ブッッ!?」 突然耳に入った言葉に噴き出す。 今、僕名前呼ばれた? ジュリエットって、え?

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