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文化祭3
発言者を見れば、4人の女子の集団が愉快そうに笑みを浮かべていた。
みんなきつい性格と派手な化粧が印象的で、どうしても苦手意識がある。正直怖い。
彼女たちが僕を嫌悪していることは知っていた。きっと慎太郎くんが僕といることを快く思っていないのだろう。
落ちこぼれのくせに生意気。そんな不満が向けられる視線から伝わってくる。
「は、マジで?マスクマンがジュリエット?」
「完全にネタじゃん。変なこと言うなよなー」
「ってかマスクのせいで声こもって聞こえねぇって」
「じゃあ取ればいいんじゃない?」
一斉にみんなの視線が僕に突き刺さる。
時々素顔に興味を持たれることはあったけど、こんなあからさまにはなかった。
彼女たちが僕を推薦したのは、ただ僕を辱めたかっただけだろう。
みんな本気にしたりしないし、すぐ流されて終わりだ。
そう自分に言い聞かせ、体を縮こませる。
「おい。あんま面白がってんじゃねーよ」
その声に俯いていた顔を上げた。
視線の先の生駒くんは、そう言ってみんなを咎めている。
「えー。生駒だってマスクマンのことイジってたじゃん」
「は?いつの話だよ。今はしてねーし」
「確かに!どういう心境の変化?謎すぎ」
みんなの笑い声に更に体が縮こまる。
生駒くんが庇ってくれて、嬉しい気持ちはあっても、やっぱり申し訳なかった。
彼まで笑い者にされるなんて耐えられない。それなら僕1人がバカにされる方がずっと……
「いいんじゃない。やろーよ虎介」
「……え」
その言葉に、僕だけじゃなくクラスの全員が一瞬固まった。
それは慎太郎くんの発言だったからだ。
みんなから視線を向けられた彼は、いつも通りの爽やかな笑みを浮かべている。
どういうことだろう。
何故、そんなことを。
だってやるとするならマスクも眼鏡も外すことになる。
というかそれ以前の問題だ。
隠キャの僕がそんな目立つ役割、無理に決まっている。
散々素顔を見せるなって言っていたのに…
も、もしかして……朝の腹いせ!?
彼の笑みから黒いオーラが出ている気がしてきた。
完全に意地悪な時の慎太郎くんだ…。というかもう、そのキャラ開き直ってない!?
「出たよ…、黒シン様」
やっと腹黒本性見せ始めやがった。
ざわつくクラスの中で、生駒はポツリと呟き顔を引きつらせるのであった。
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