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文化祭6
「大丈夫。シンは虎くんのこと嫌いになんてならないよ」
「……ほんと?」
少し顔を上げうるうるとした瞳でこちらを見上げてくる。その姿は虎というよりも子猫のようだ。
あまりの可愛さに口元が緩みそうになるのを堪えて、志音は頷く。今のは気休めで言ったのではなく、ちゃんと確信があっての言葉だ。
「シンは嫌いな相手にはまず関わろうとしない。一切の興味もなくすからね。そのシンが柄にもなく拗ねてるのは、それだけ虎くんのことが大切ってことだよ」
「大切…」
肌が白いせいか、目尻や鼻が赤くなっているのが目立つ。僕の話を聞いて、今度は顔全体が赤くなった。
そのウブな反応が可愛らしい。
未だ触れていた髪の毛をうりうりと撫で回すと、虎くんは動揺し始める。
なんだこの子。病み付きになりそう。
「まぁそんな思いつめないでさ。折角の文化祭だし楽しみなよ。僕もなんかコスプレすることになってるし」
「コスプレ?どういうの?」
「えっと、確かチアリーダーだったかな?」
「チアリーダー!」
目をパチクリさせて面白い反応をする虎くんに「それに女装は経験済みでしょ?」とニヤッと口角を上げれば、虎くんは「志音くん、意地悪だ…」とキュッと形のいい眉を寄せるのだった。
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