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文化祭8
「うそ…」
いきなり現れた美少年に、二人は絶句する。
驚く程整った顔立ちはひどく美しく、同時に愛らしさも兼ね備えていた。
僅かに伏せられた睫毛。
キュッと結ばれた唇。
紅潮した頬。
その全てに魅了され、しばらく二人は放心し立ち尽す。
「あの、どう、しましたか…?」
固まった二人を、虎介は不安気に見つめ首を傾げた。
「一から衣装作ろ!もっと豪華なやつ!くぅ〜腕がなるね!」
「これはシンプル過ぎるから、もっと工夫できるわよね?今日ちょっと材料調達してこようかな」
「あ、あの…」
先程と全く違うテンションに狼狽する。
二人とも、凄いやる気だ。
すっかりノリノリな二人に教室の隅で衣装を着せてもらい、それからあれやこれやと付け足され始める。
カツラや靴、イヤリング。
化粧は流石にされずに済んだが、サイズ合わせだけだったはずが色々と発展してしまっていた。
「なになに?随分楽しそうだけど?」
「ジュリエットどうなったー?」
そうしていると、他の作業をしていた人たちに意識を向けられてしまう。
多くの目が向けられて僕は身を縮こませた。しかし隠れることなどできず、衣装担当の二人がグイグイと僕を前へ追いやる。
そのせいで完全にみんなの視界に入ってしまった。
誰かが「え…」と呟いたのが聞こえた。
次には周囲がしんと静まり返り、まるで時が止まったような錯覚に陥る。
──……そして。
「「「えぇえええええええええ!?」」」
次に聞こえたのは怒号や悲鳴にも取れるほどの絶叫だった。
あまりの音の大きさに耳がキーンとして一瞬目の前が真っ白になる。
反射的に閉じた瞼を恐る恐る開いてみると、目の前にはあらん限り瞠目し驚愕するみんながいた。
その様子に今度は僕が面食らっていると、あっという間に取り囲まれてしまう。
そのあまりの勢いに僕は今すぐ逃げ出したい衝動に駆られたが、なんとか堪えるしかなかった。
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