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文化祭9
買い出しから帰ってくると、何やら教室が騒がしかった。
歓喜なのか困惑なのかよく分からないテンションのクラスメイトたちに、俺は一緒に買出しをしていた岡本と顔を合わせる。
そうして訝しげに教室へと入った俺は、人だかりの中心にいる人物に瞠目した。
瑠璃色のシンプルなドレスを身に纏った姿は、まるで本物のドール人形のようにさえ見て取れる。
一つ一つのパーツが恐ろしく整った顔は美しく、同時に感じる幼さがどうしようもなく愛らしい。
教室内で異質な存在感を放つ彼女…、いや彼に、俺は息をするのも忘れて魅入られていた。
あーやべ…。やっぱ好きだわ。
俺は知っている。あの困り顔がふんわりと微笑んだ時の胸の高鳴りを。
俺を肯定してくれた虎ちゃんの笑みが、未だに何度も頭の中をリフレインする。
その時ふと、虎ちゃんと目が合った。
彼はその大きな眼を見張ると、次には縋るような視線を向けてきた。
それでやっと体が動き、人集りを掻き分けた俺は虎ちゃんの肩に手を回し引き寄せる。
その時香った甘く爽やかな香りは気合いで意識外に置い……いや無理、置けなかった。
男なのになんでこんでいい匂いがすんだよ反則だろ。
「はいはいお前らちょっと離れろ。虎ちゃん怯えてっから」
周りからのブーイングをしっしっと払いのける。
虎ちゃんは余程怖かったのか、俺に肩を抱かれてるのも気にせずにふっと息を吐いた。
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