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文化祭10

次の日いつもと同様顔を隠して登校すると、再びクラスメイトたちに囲まれてしまった。 何故顔を隠しているのかと質問責めに合いあわあわしていると、一緒に登校した慎太郎くんが助けに入ってくれた。 しかしその後も何度も絡まれては好機の目を向けられ、まるで動物園のパンダにでもなった気分だ。 すっかりヘロヘロになってお弁当を食べていると、隣の慎太郎くんは「いやーまいったね」と苦笑する。 「まさかここまでとは俺も思わなかった。きっと他クラスにも情報が入ってるよ。ほんと、流石は虎介」 そのうちファンクラブとかできそう。などと笑う慎太郎くんをきゅっと睨みつける。 冗談じゃない。覚悟したからには今の状況をどうこう言うつもりはないが、そもそもこうなったのは慎太郎くんが原因だ。 なのに悪びれた様子もなくふざけられたら、流石にムッとしてしまう。 「……中学生の頃」 「ん?うん」 「ファンクラブが、実際、あったみたいで…」 「へぇ、凄いじゃん」 慎太郎くんにもできてそうだけど……と思ったが、そこは今関係ないので言わないでおく。 僕は少し間を置いて、話を続けた。 「そのファンクラブ?の人たちに、何度も盗撮されたんだ…」 「え。盗撮?」 「うん。中には僕が着替えてるものとか、結構際どい写真もあって…。それを売ったり買ったりみたいなお金のやり取りがあったみたい」 あの時は僕も気付かなかった。 偶に違和感を感じはしていたけど、まさか盗撮されているなんて思いもしない。 「売買って、まずいんじゃないの?」 「うん…。結局先生にバレて…、大々的に禁止令が出された」 「禁止令…?」 「全校集会で、『天野虎介くんの写真でお金のやり取りをするのは止めましょう』って」 「え」 これには流石の慎太郎くんも硬直した。 本当に、信じられない処置の仕方だったと思う。あの時の僕がどれ程の恥をかいたことか。立ち尽くす僕は、すぐにでも体育館から逃げ出したかった。 騒めく一体。向けられる視線。 やたら真剣に話す生徒指導の先生の声が、この上なく不快だったのを覚えている。

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