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文化祭12
「……虎介って何気スペック高いよね。運動できて、頭もいいし」
「えっ。い、いやいや…!慎太郎くんにそんな言ってもらうのは痴がましいよ…!」
なんでもトップクラスの慎太郎くんに褒められるなんて居た堪れない。
頭だって言われるほどいいわけでもないし。他にやることもないから勉強しているだけだ。
「虎介が言うほど俺って万能じゃないよ?買い被りすぎだって」
「そんなことない!慎太郎くんは何においても一番じゃないか」
「でもバスケでは虎介が勝ったよね」
「えっ。あ、あれはマグレで…。優璃くんが頑張ってくれたから…」
「ふーん」
頬杖をついて、慎太郎くんは面白そうに僕を眺めている。
あ、これ遊ばれてるのかな。
気づいた僕がきゅっと慎太郎くんを睨むと、彼は可笑しそうに笑った。
その顔に不覚にもドキリとしてしまう。
無邪気な笑顔を、いつもは爽やかな彼にされると弱い。
胸がギュッと締め付けられて、そわそわする。
その度に僕は、彼への恋心を自覚するんだ。
でもこういった想いの伝え方とか、距離の縮め方とかが分からない。
今まで僕は遠ざかることしかしてこなかったから…。
授業後に文化祭の準備をしてから帰宅すると、いつもよりも帰りが遅くなる。
そのため今日は碧兄の方が帰りが早かったみたいだ。リビングに入ると美味しそうな匂いがして、僕は顔を綻ばせた。
「おかえり虎介」
「ただいま。夕飯ありがとう」
優しい笑みに迎えられ、心がほっこりした。
何を作っているのか見れば、美味しそうなグラタンがあって感嘆する。僕はクリーム系の料理が大好きなのだ。
「今日は早く帰って来られたんだ。お風呂も入れてあるから、食べたら入りな。洗濯物も入れといたよ」
「うぅ、ありがとう碧兄〜」
なんて優しい兄なのだろう。こんな兄がいたら、ブラコンになるのは当たり前だと思う。
感極まって料理中の背中に抱きつくと、いい香りがした。碧兄はもうお風呂入ったんだな。
「ただいまー」
そうしていると、ガチャリとドアが開いて父さんが入って来た。
あ。と思ったが少し遅い。
僕らを見るなりこちらへやって来た父さんは、べりっと碧兄に抱きつく僕を引き離した。
そしてその逞しい胸板に僕の顔を押し付け抱き寄せる。頭上からは「ヴーッ」と威嚇する獣みたいな声が聞こえた。
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