106 / 216

ロミオとジュリエット2

そうしていると、隣にやってきた慎太郎くんに肩を叩かれた。 なんだろうと顔を向けると、一瞬でマスクと眼鏡を外されてしまった。 「えっ、なに……!?」 「練習するなら取ったほうがいいでしょ」 「た、確かにそうだけど……。まずは台詞読むだけだよね?」 「マスクで声こもっちゃうじゃん。いいから、練習中は取ってね」 確かに、練習中にマスクをしたままではいけないだろう。 何も言えず、隠すものがなくてそわそわする僕に慎太郎くんは微笑んだ。 「大丈夫。俺がいるから」 「……!」 一気に顔を赤らめる僕に彼はまた笑った。そして手を引かれ歩き出す。 「さ、行こ。練習練習」 「……」 さらりとそんなことを言ってしまう彼に、こっちが照れ臭さを感じてしまう。 しかもまったく違和感を感じないのはなんなんだ。 すっかり赤くなった僕は、慎太郎くんに連れられてみんなの輪の中に入っていった。 その瞬間、一気に視線が僕に集中する。僕はそれに耐えられず、つい慎太郎くんの後ろに隠れてしまった。 すると輪の中にいた生駒くんが、隣の男子の頭を叩く。 「いてっ!なんだよ」 「ジロジロ見んな。早く練習するぞ」 その言葉に周りがハッと我に返った。 動き出した周りに僕がホッとしていると、慎太郎くんがくすりと笑う。 「ほんと、あいつって単純だな」 「え?どういうこと?」 「好きな子相手の行動が分かりやすい」 「す……っ」 いきなり何を言い出すのだと眉を寄せれば、慎太郎くんは僕の頭をうりうり撫でた。 そうすると生駒くんに「おいそこイチャコラすんな!」と叱られてしまう。 別にそんなつもりはなかった僕が狼狽する中、相変わらず慎太郎くんは楽しそうに笑っていた。

ともだちにシェアしよう!