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ロミオとジュリエット4
ひと台詞言い終えた途端、周りが騒めいた。
ギョッとして我に返れば、同じくギョッとしたような表情のみんながいる。
なにっ?僕、何かした……!?
「すげー!なに今の!」
「見えた!今ロミオとジュリエットが見えた!」
「やばっ、マジ鳥肌立ったわ……!」
「ってか天野、まったく違和感なく女役こなすとかなんなの!?」
盛大に盛り上がるクラスメイトたちにビクついた僕は、咄嗟に慎太郎くんの腕を掴んでしまった。
すぐに手を離して謝ると、彼は僕をまじまじと見つめ、やがて噴き出す。
どうしたのかと首をかしげると、慎太郎くんはケラケラ笑いながら言った。
「ほんと、虎介って最高だわ」
さらに意味が分からなくて困惑する。
そんな僕を見て、慎太郎くんは笑うばかりでそれ以上は何も言わなかった。
「なんか今日のシン。すげー楽しそうだったな。ちょーご機嫌って感じ」
「ん?そりゃ楽しいよ。何度も虎介と愛の言葉を交わし合ったからね」
「「ブッッ」」
笑顔で答える慎太郎くんに、僕と生駒くんは同時に噴き出した。それを志音くんが面白そうに眺めている。
練習が終わって、僕らは帰路についていた。
駅までの道を、僕と慎太郎くん、そして生駒くんと志音くんで歩いていく。
それぞれと交流はあるけれど、この4人が一緒にいるというのは初めてだ。
慎太郎くんと生駒くんは仲がいいのか悪いのかよく分からないのでハラハラするけど、志音くんはなんて事ないように笑顔を浮かべている。2人のやり取りなど慣れたものという事だろうか。
爽やかな笑顔を浮かべる慎太郎くんに生駒くんは顔を引きつらせ、次にはウガーっと頭を抱えた。
「ってか!なんで俺パリス役なの!?マジで勘弁!」
「そう?僕は優璃にピッタリだと思うけど。スカした感じとか」
「おい志音!それ悪口だぞ!」
パリスとは、ジュリエットが両親に結婚を命じられる大公の親戚パリス伯爵のことだ。
物語では悪役的立ち位置にいる人物で、大公の片腕貴族。ジュリエットに恋をしていて、ロミオとは敵対する関係にある。
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